丸山ゆ利絵が読んで、「エグゼクティブプレゼンスに興味のある人に読んでほしい」と思った本や、その一節をお伝えしています。分野はランダムですが、あなたの「エグゼクティブプレゼンス的教養」のために、のぞいてください。
あなたには「ルール」がありますか?
この本のあとがきに「『世界の一流」と呼ばれる人たちを見ても、やはり、当たり前の『基本」にとことん徹し、結果圧倒的な成果を出している人ばかり」という一文が出てきます。
少し血なまぐさいエピソードから始まるこの本は、「トリアージ」という有名な傷病者の選別方法を例にしながら「シンプルなルール」の効用とその作り方を教えてくれます。
なるほど「トリアージ」は主に災害や大事故、戦乱の場にあって、短時間のうちに患者の状態と治療の優先順位をつけていく手法です。そんな場面では大規模な検査器具など望めません。ですから、誰もが(もちろん資格を持った医療従事者という条件はつきますが)シンプルなルールにしたがって判別ができなければなりません。
そして、こんな時には主観が入る余地を作るとややこしい。ですから客観的な指標としてのルールが必要です。
誰もがわかりやすいシンプルなルールが作れれば、覚えやすいいので皆が運用しやすいし、検討や判断にかかる時間も節約できる。再現性も高いから、成功率も上がる。そんなルールを仕事や生活の中で持てれば、自分自身の決断力、生産力もどんどん上がりそうです。
ということでご紹介するのは、「SIMPLE RULES」。
(クリックするとAmazonの書籍紹介のサイトへ移動します)
日本では2017年に刊行された本です。Amazonの内容紹介では「世界の名門ビジネススクールで教える、あらゆるムダと時間を削ぎ落とし。成果を最大化する方法!」と書いてあります。しかし、固く難しいことは書いておらず、まさに「わかりやすくシンプル」な文章で読みやすいです。冒頭のトリアージのエピソードをはじめとして、事例を多く使ってくれているので、物語のようにスイスイ読めます。
これを読むと、「そういえば自分も、こういうルールを持っているな」と思い当たる人もいるのではないでしょうか。例えば、「メールは◯時にまとめて見る」という仕事上の習慣や、「甘いものは夜食べない」といったダイエットの取り組みなども、いわば「シンプル・ルール」です。しかし、いずれも日常的に自分に課してはいても、どこか無意識な習慣としている人が多いのではないでしょうか。
この本は、そんな無意識の習慣を改めて見直し、さらに自分に役立つルールを作る意欲をくれます。シンプルルールの種類や性格を教えてくれるので、自分の持つルールを俯瞰的に見やすいのですね。日常にちょっとした気づきをくれる、というところがビジネス本として人気が高い理由かもしれません。
と、いう風にとっつきやすい内容ではありますが、その反面、このような「シンプルなルール作り」は意外と難しいものと知る本でもあります。「シンプルさ」とは、色々と考えなければならない要素群を抽象化し、自分や他者の経験に照らし合わせて検討した後の、削ぎ落として研ぎ澄ました状態であるからです。特に抽象思考の苦手な方には、ハードルが高いことでもあるのです。
しかし、「これをシンプルなルールにするにはどうしたらいいか」と折に触れて考える習慣は仕事や生活の質が向上させてくれるはずです。仕事を進めるためのルール、人に大事なことを伝える時のルール、チームをまとめるためのルール、自分が健康に過ごすためのルール、などなど、きちんと考えれば考えるほど、今までより判断や行動の精度が上がることは間違いありませんし、考えるための頭も鍛えられそうですから。
「シンプルなルール」は業務運営、経営のビジョンや信念の形成にも繋がります。経営者の方、リーダーの方には一読をお勧めしたい本です。
ただでさえ、社会や仕事の変革の年と言われていた2020年、予想もしなかったウィルス禍のせいでさらに予測がつかなくなってきています。こんな時こそ「シンプルなルール」を見直すことは一つの道しるべになるのではないでしょうか。