丸山ゆ利絵が読んで、「エグゼクティブプレゼンスに興味のある人に読んでほしい」と思った本や、その一節をお伝えしています。分野はランダムですが、あなたの「エグゼクティブプレゼンス的教養」のために、のぞいてください。
グローバル企業の幹部トレーニングって?
英国のロイヤルカレッジオブアート(RCA)がここ数年のあいだ、企業向けに意外なビジネスを拡大しつつある。それは何か?
それは「グローバル企業の幹部トレーニング」
こんな導入から始まる本。
気になりますよね?
フォードやVIZAなど、名だたるグローバル企業が各社の将来を担うであろう幹部候補を参加させる、そのトレーニングとは?
それは「美意識」を鍛え、「デザイン思考」や「創造力」を鍛えるためのプログラムが組み込まれたトレーニングだそうです。企業幹部がこれまでの「論理的・理性的スキル」に加えて「直感的・感性的スキル」を獲得することを期待してのことです。
他に知人に聞いた話では、教養としての絵画の見方、芸術の変遷の歴史なども加わる場合があるそうです。
以前ならグローバル企業のビジネスエリートに似合うのは、バリバリの論理的スキルや、プレゼンテーションなどの実務スキルの学習ではなかったでしょうか。
しかし、「論理的・理性的」なものの捉え方だけでは、ビジネス(経営・営業・人材育成など各面において)は決してうまくいかない、ということはすでに市井の私たちでさえ知っていること。人の感情や感性に対しての配慮がどれだけ重要であるかも多くの人が知っています。
ということでご紹介するのは、「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか?」。
(クリックするとAmazonの書籍紹介のサイトへ移動します)
「美意識」、とりわけリーダーの美意識とは何か、どうして「論理的・理性的」だけではだめなのか、どう美意識を鍛えるか、を非常に知的に語っています。(ときどき疲れる語調ですが、全般的にわかりやすい)
また、日本にはない「エリート」の世界も覗き見ることができ、面白いです。
この本は2017年7月初版。すでに言われ始めていた「ビジネスエリートの変化」が特に取り沙汰され出したころ、という気がします。
論理力に裏打ちされた「知性」だけではなく、「感性」で育む知性がにわかに評価されはじめ、また自然にそこに注目するエリートも増え始めたのです。
インターネットの普及ー情報の氾濫ーSNSなど表現や伝達手法の簡易化ーボーダレス化
・・・人はどんどん感覚的になっています。
AIの発達の問題も見逃せません。やすやすと負けないためには、人の「感覚」に色々な意味で意識的にならなければならないでしょう。
(エグゼクティブ・プレゼンスも正に、こんな時代に耐えうる「感覚で訴える力」なのです。)
そんなことから、興味深いテーマなので、まだ読んでいない方は読んでみてください。これからどんどん活躍される方には、目を通したほうがいい本です。
ただ、この本はそれこそ「論理的・理性的」に書かれた本。これだけで終わらず、身の周りにもっとアートなどに触れる機会を増やしていったり、感性を伸ばすためのアクションを実際にとらなければなりませんね。
私自身、昔からグローバルに活躍する人、それが海外の方でも日本の方でも、お話ししてつくづく思うのは「文化や芸術に対する感性の豊かさ」です。
例えば、そう言った方たちに豊かさを感じるのは、自国の文化や歴史に対して理解が深い、他国文化に対して自然な関心や好奇心を持ち合わせる、美術を見たり芸術的音楽を聴くことが生活に自然に取り入れられている、ということにおいて、「すごいなあ」と思うのです。といっても、それがあからさまにわかるほどひけらかしているわけではなく、言葉の端に他の一般人とは違う内部の豊かさを感じるというところでしょうか。
そういった豊かさを感じるたび、どうも自分の「貧しさ」に悔しさを覚えます。この本の筆者も言っていましたが、日本はまだまだ「仕事が忙しくて美術館なんかに行っている暇なんかないよ」とうそぶくビジネスパーソンが多いよう。これからは少し意識を変えた方がよさそうですね。
これと似たテーマで、「なぜ世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのか?」という本もあります。こちらは、「美術鑑賞の仕方」により重点を置いているようです。私はまだ見ていません。
もしご覧になったら感想を聞かせてくださいね。